12年目の恋物語
そうして、今、オレの前には羽鳥先輩が座っている。
例によって、和食処 和(なごみ)。
志穂は部活。
オレは、羽鳥先輩の前で一人座りながら、居心地の悪い思いをしていた。
「さて、広瀬くんに、やって欲しいことがあるんだけど、いいかな?」
さわやかに言われるけど、素直に受け取れない。
だって、この人、言うなれば、オレのライバルだろ?
「それ、やらなかったら、どうなるんですか?」
そう言うと、先輩はマジマジとオレを見返してきた。
そうして、呆れたように、
「真剣味が足りないな」
と言うと、スッと立ち上がった。
え!?
「は、羽鳥先輩!? 待ってください!」
そう言えば、志穂は羽鳥先輩の言うことを聞くようにって、散々、言っていた。
「分かってる? 叶太くん、ちゃんと聞いてよ?」
「はいはい」
ああああ!
「はいはい」、じゃないだろ、オレ!!
「す、すみませんでした!
なんでも聞きます!
なんでもやります!!
生意気言って、申し訳ありませんでした!!!」
オレは反射的に立ち上がって、ガバッと頭を下げた。