12年目の恋物語

兄貴が説明してくれたのは、こんな感じのことだった。



4歳、年中のとき、ハルは幼稚園で走り、発作を起こして倒れた。

倒れただけでなく、1ヶ月近くも生死の境をさまよって、その後、二度も大きな手術をする羽目になった。

春に倒れたのに、次に登園できたのは、秋だった。



そのとき、一緒に走ろうと、ハルを誘ったのがオレ。



よく覚えている。

本当に、なんて恐ろしいことをしてしまったのだと、恐怖に震えたのを覚えている。



「ハルちゃん、おまえが、このことに責任を感じて、ハルちゃんの世話係を買って出て、奴隷のように働いている、と思ってるんじゃないかな?」



……ど、奴隷。

いや、ハルの奴隷になら、なったっていいけど。



「オレ、あれは死ぬほど後悔してるし、

今でも、ハルがちゃんと生きて戻ってこれてよかったって思ってるけど、

責任とか奴隷とか、考えたこともないんだけど」



「それは、わかってるさ。

問題は、ハルちゃんがどう思ってるか、だろ?」



オレは兄貴の言葉にうなずいた。

もっともだ。



「じゃあ、叶太は、どうしてハルちゃんに恋をしたの?」



え!?



「純情だな、叶太。顔、赤いぞ」



からかわれて、思わず兄貴を睨みつける。



「まあまあ。……でも、ここは大切だろ?」



「なんで?」



羽鳥先輩なら答えてくれなさそうな質問だけど、兄貴は苦笑いしながら教えてくれた。
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