12年目の恋物語
叶太くんが、ゆっくりと歩いてくる。
顔が真っ赤だ。
かなり緊張してる。
右手と右足が一緒に出てるよ。
こんなときなのに、ちょっとおかしくなって、思わず笑顔になる。
叶太くんが、陽菜の前に着いた。
誰もが、注目する中、陽菜は涙で濡れた顔で、叶太くんを見上げた。
叶太くんは、そのまま、スッと陽菜の前にしゃがんで、
「ハル、好きだ」
真っ赤な顔で、そう言って、
それから、手に持っていた若草色の封筒を、陽菜に差し出した。
「ハル、オレと付き合って」
たぶん、今、ここに、「あれ? もう付き合ってたでしょう?」って思った人は、いない。
そんなこと、きっと、みんな忘れてる。
陽菜は、両手でその封筒を受け取ると、小さな声で、
「わたしでいいの?」
と聞いた。
「ハルがいいんだ! ハルじゃなきゃ、ダメなんだ」
叶太くんが、陽菜の手を取って、もう一度言った。
「ハル、オレと付き合ってください」
陽菜が、
「はい」
と、また、小さな声で言った。
その瞬間、教室が壊れるんじゃないかというくらいの、大歓声が起きた。