12年目の恋物語
二人はもみくちゃにされた。
特に、叶太くんが。
スピーカーからは、明るい音楽が流れていた。
音楽に乗って、放送部員の声が聞こえていたけど、もう誰も聞いていなかった。
教室の中は、祝福の嵐で、
教室の外から覗いていた、他のクラスの人たちは、
うちのクラスに大歓声が起きた後、なだれ込んできた。
わたしと斎藤くんは、陽菜が押しつぶされないように、守りに入って、
叶太くんも、当然、そうしようとしたけど、
「おめでとう!!」
「やっぱり、ケンカしてたのかよ!!」
「すげー、オレ、感動したわ!!」
とか、とにかく、もみくちゃにされていて、
申し訳なかったけど、わたしたちは、陽菜を叶太くんから引き離した。
叶太くんからは、恨みがましい視線をもらったけど、
いいじゃん、これから、いくらでも一緒にいられるんだからさ。
陽菜が泣きながら、わたしたちを見上げて、震える声で言った。
「ありがとう」
わたしは、そっと、陽菜を抱きしめた。
「よかったね!」
あんまり嬉しくて、嬉しすぎて、
気がついたら、笑っていたはずのわたしの目からも、涙があふれ出していた。