12年目の恋物語
エピローグ
7月。
衣替えも終わり、太陽の光は強く、日々、気温が上がっていた。
肌に当たる風も、すっかり生暖かくなった。
オレは、廊下をハルと手をつないで歩いていた。
ハルは恥ずかしがるけど、オレはおかまいなし。
何しろ、何をしていても、何もしていなくても、
手をつないでいても、つないでいなくても、
結局、からかわれるんだ。
からかう代わりに、遠くから熱い視線で見られることもある。
それは、どうやら、恋ってものへのあこがれから来るものらしくて、これまた、背中がむずがゆい。
だけど、本当に、毎日が幸せで、幸せで、思わず笑みがこぼれるような、幸せな毎日で、
少しくらい、からかわれたって、まるで平気だった。
6月までの苦しさは、何だったんだと思えて来る。
図書館に着いた。
オレを断る口実に、何度も使われた場所。
ハルが、羽鳥先輩と会う場所。
カウンターには、ちょうど羽鳥先輩がいた。
あの放送、ぜったい憂さ晴らしも入ってただろう、って、そう思ったけど、言えなかった。
確かに、あれは効果的で、オレが知らない内に録られたオレの言葉は、どう聞いても、まぎれもない本音だったから。
オレがハルに向けて言った言葉や、あのラブレターだけじゃ、ハルは信じてくれなかったかも知れない。
「やあ」
「こんにちは」
ハルが嬉しそうに、羽鳥先輩の待つカウンターに返却する本を差し出した。
オレはぺこりと頭を下げた。
「この本、どうだった?」
「面白かったです!」
「続編あるよ、持って来てあげようか?」
「あ、わたしも一緒に行きます」
カウンターを隣の図書委員に頼んで、羽鳥先輩は書架へと向かった。
オレは、あの後、先輩にお礼を言いに行って、
苦笑いされた。
「ハルちゃんが笑ってるのが、一番だからね」