12年目の恋物語
後日談 ~片恋~

「なあ、羽鳥。さっきのあれ、おまえだよな?」


広瀬、世紀の大告白の放送のすぐ後。

キャーキャー騒ぐ女子、ざわめき興奮する男子多数の中、実に冷静に声をかけてきたヤツがひとり。



「ん? 何のこと?」



本気で分からないという顔をしてみせるが、呆れたような顔が返ってきた。



「おまえね、オレにそれが通用すると思ってんの?」

「いや」



笑うと、そいつも笑った。

中等部から、かれこれ5年目の友人、木田健太郎。



「で? なんで気づいた?」

「だって、放送部のヤツとつるんで何か話してたじゃん」



たしかに、ここ数日、この放送のための打ち合わせをしていた。



「それだけ?」

「相手、おまえのお気に入りのハルちゃんだろ?」



いつからか、コイツには、ボクがハルちゃんを気に入っているのが、バレている。



「それが、どう繋がる?」

「先輩、知らないだろ。ハルがどれほど優しくて、暖かくて、可愛くて……」



木田がしれっと、広瀬の台詞を暗唱する。



「よく覚えてるな」

「その先輩がおまえだろ?」



1年の広瀬には、先輩なんてものは何百人といるはずなのに。

だけど、もうすっかりバレているらしいから、今さら隠しても無駄だろう。



「なんで、分かった?」

「ん? 寺本とか来て、色々話してたじゃん?」



そこで、ようやく思い出す。



「バスケ部か」



コイツもバスケ部員だ。



「そ。寺本、ハルちゃんと仲良いだろ」

「よく知ってるな」



目の前の男は、二カッと笑った。

がっしりした身体と、大きな声、一見、乱暴な動きが特長。



「後、少し前だけど、広瀬がわざわざ寺本と話しに来てたしな」



でも、がさつに見えて、意外なほどに鋭く、物事の核心を見ている。

コイツのこういうところ、嫌いじゃない。
< 186 / 203 >

この作品をシェア

pagetop