12年目の恋物語
「あら、どうしたの? どこか具合、悪い?」
先生が不思議そうな顔をする。
そりゃ、そうだ。
見るからに、わたしは元気そう……ってか、健康そのものだし、もちろん、怪我もしていない。
でも、今は授業中。
ヒマだから、先生とおしゃべりに来たというのは通用しない。
それ以前に、わたしは、保健室にしゃべりに来るようなタマでもないしね。
「牧村さん、来てます?」
聞いてはみたけど、来ているのは事前調査済み。
「ええ。寝てるわよ」
先生はあの日のことを覚えているのだろうか?
あの日。
わたしが、牧村さんを呼び出して、牧村さんが死にかけたという、あの日。
「ちょっと、話してもいいですか?」
「え? でも、具合が悪くて寝てるのよ」
先生は困ったような顔をする。
そりゃ、そうだと思う。
だけど、ここで引くわけにはいかない。
「ちょっとだけ」
彼女と2人きりで話せる場所を考えてみた。
もう、呼び出したりはできない。
いくら人の良い牧村さんで、さすがに、もう、ついて来ないでしょう?
教室で話すのも論外。
叶太くんの目の前で話すわけにはいかない。
悩んだ末に、思いついたのは、授業中の保健室だった。
それでも、先生が渋い顔をしていたので、仕方なく、わたしは続けた。
「……あの。わたし、彼女に謝らないといけなくて」