12年目の恋物語
3.陽菜の悩み
「おっはよ、叶太! ハルちゃんも、おはよ」
朝、廊下を歩いていると、中等部から一緒の男の子が、隣を歩くカナの肩をポンと叩いて、わたしたちを抜かしていった。
「よ、相変わらず、仲良いね~!」
そんなことを言いながら、通り過ぎていく人もいる。
小学何年生の時だったかな?
いつの間にか、毎朝、カナが車のところまで迎えに来て、わたしの荷物を持ってくれるようになっていた。
多分、最初は、まだまだひ弱だったわたしが、ランドセルのあまりの重さに、階段の踊り場でしゃがみこんで動けなくなってしまって、それをカナが助けてくれたとき。
それ以来、毎日必ず、わたしの鞄を持ってくれる。
カナはとても健康で、ほとんど皆勤賞って子だったから、それは本当に毎日だった。
中学生になってからも。
……高校生になった、今も。
もう、鞄持ちはいいよって言ったのに、カナは聞いてくれない。
わたしが本当にいいんだって言うと、カナがとても傷ついたような顔をしたので、それ以上言えなくなってしまった。
感謝しているから。
本当に、ありがたいと思っているから。
カナがしてくれたことが迷惑だって言いたかったんじゃないから。
だから、カナが傷ついたような顔をしたのを見ると、もう何も言えなくなってしまった。
でも、カナ、一緒に登校しているならともかく、わざわざ裏口まで、毎朝、毎夕、わたしの送り迎えなんて、やっぱりおかしいよ。
いつの間にか、これが日常になっていた。
ずっと、それが当たり前だと思ってた。
カナが優しく、いつも笑っていたから。
……なんて、傲慢だったんだろう。