12年目の恋物語
寝起きのぼんやりした彼女の瞳に、わたしの姿が映る。
「……あ」
瞬間、彼女の目が大きく見開かれた。
その目の奥に恐怖と怯えが垣間見えた。
なによ、その顔。
謝りに来たはずなのに、
その表情に、思わず、ふつふつと意地悪な気持ちがわき上がる。
「ホント、病弱なのね」
叶太くんが、この子を抱きかかえて歩くのを何度見たか。
誰からも大事にされるお姫様。
叶太くんが、宝もののように大切にしている女の子。
わたしの言葉に、牧村さんの表情がゆがむのを見て、瞬間、我に返った。
「あ、……ち、違うの!」
慌てて、言い訳する。
「そうじゃなくて! わたし、今日は謝りに来たの!」