12年目の恋物語
「ごめん…ね」
「え? ハル? いったい、どうしたの?」
涙が止まらないまま、いきなり謝りだしたわたしに、カナが困った顔をする。
「ごめんね」
もう、自由になっていいんだよ、カナ。
そう思うのに、
言葉にならなかった。
なにを言っても、カナは「そんなことない」って否定する気がして。
否定されたら、きっと、わたしは、またくじけてしまうから。
だって、こんなにツラい。
カナのいない毎日を想像するだけで、眼が潤んでくる。
「ハル、ごめんな、起こして」
カナが、よしよしと、大きな手でわたしの頭をなでた。
「もう少し、休んでな。で、今日は帰った方がいい。家に電話しといてやるから」
ほら、と、カナが、また涙を拭いてくれた。
結局、そのまま、わたしはまた眠ってしまって、それから、迎えの車に乗り、早退した。
寝ている間、休み時間には、やっぱりカナが来てくれていたらしい。
養護教諭の先生に、
「相変わらず、お熱いわね。優しい彼氏で幸せね」
と言われ、なにも答えられなかった。