12年目の恋物語
「ねえ、カナ。
おじさまに、わたしと同じクラスにして欲しいって
頼んでるって、本当?」
そう言えば、ハルの様子がおかしくなりはじめた頃、
ハルが突然、そんなことを言い出した。
「え? 何を突然」
真面目なハル。
だから、オレが親父にそんなことを頼んでると知ったら、きっと怒ると思ったんだ。
だから、今までも、ずっと「腐れ縁」で通してきた。
ハルも、これまで、一度も突っ込んできたことはない。
12年間、一度もだ。
だから、オレは、多分、油断していた。
動揺が顔に出ていたんだと思う。
「……やっぱり」
「え? ハル?」
「本当だったんだ」
ハルの声が、心なしか揺れた気がして、オレは慌てて、ハルの顔を覗き込んだ。
「あのさ、ハル」
言い訳しようと思ったのに、ハルはもう、オレの目を見なかった。
「ハル」
ハルの両頬を手のひらで挟んで、オレの方を向けた。
ハルは、今にも泣き出しそうに、顔をゆがめた。