12年目の恋物語

ハルとの仲がおかしくなりはじめたきっかけ。



正直、これくらいしか、思いつけない。



その時は、生真面目なハルが、

自分のためにオレが10年以上も不正を働き続けたっていうことに、

ショックを受けているんだと思っていた。



だから、



「だけど、ハルと一緒にいたかったから」



とか何とか、暗い表情のハルを前に、ただ、ひたすら言い訳を並べた。



でも、幾つの言葉を並べても、ハルの表情は変わらなかった。



そして、最後に、



「ごめんね」



と言った。



え?

なんで?

それは、オレの台詞だろう!?



そう思ったし、そう言いもした。



でも、ハルは、もう一度、



「ごめんね、カナ」



そう言うと、暗い表情のまま、顔を伏せた。





あれから、二週間。



原因と言えば、それくらいしか思いつかない。



だけど、たった、それだけのことで?

たった、それだけのことで、ハルがオレに愛想を尽かしたと言うのか?



どうしても、オレには信じられなかった。



怒ったとしても、数日で怒りを静めてくれるだろうと、高をくくっていた。



でも、一週間経っても、ハルは暗い顔をしていた。



朝夕、オレが鞄を持つのすら、やめて欲しいと言う。

押し切って続けたけど、ろくに口は聞いてもらえない。



二週間経っても、ハルの態度は変わらない。



12年間も一緒にいて、今まで、オレたちは言い争いをしたことすらない。



それが、たったこれだけで……?



いくら何でも、そんなハズはないだろう?
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