12年目の恋物語
「そんなの決まってるだろ」
兄貴は笑いながら言った。
「え、決まってるの!?」
食いつくオレに、兄貴は不敵に笑って続けた。
弟のオレから見ても、カッコ良い大学生の兄貴。
過去に見かけた彼女は、何人いただろう?
オレなんかより、よっぽど恋愛経験も豊富だ。
その兄貴が決まっていると言うのだから、オレが食いつかない訳がない。
「そりゃ、お前、他に好きな男ができたんだろ?」
兄貴はこともなげに、そう言った。
その瞬間、オレの表情は間違いなくフリーズしたと思う。
兄貴の顔が、
見慣れた家のリビングの景色が、
言葉の意味を理解すると同時に、
凍りつき色を失った。