12年目の恋物語
「叶太くんが元気なのに、陽菜がわたしのとこに来るなんて、初めてじゃない?」
お弁当の包みを開けながら、わたしは小首を傾げた。
「そうだっけ?」
「そうだと思うよ~」
しーちゃんが、にこりと笑う。
そう。
笑って、とぼけながらも、もちろん、自分でも知っていた。
お弁当はいつもカナと食べていた。
いつの間にか、そうなっていた。
女の子と一緒に食べたいなぁと思ったこともあった。
けど、休みがちなわたしは、親友と呼べる程に仲の良い友だちはいなくて……。
いつだって、気がつくと、カナと一緒に食べるようになっていた。
と言っても、カナと二人きりというのは珍しくて、カナはクラスでも人気者だから、色んな人がやって来て、一緒に食べた。
だけど、最近、カナと一緒だと、胸が詰まる。
カナが一生懸命、話しかけてくれるのを見て、申し訳なくて仕方なくなる。
「たまには、ガールズトークもいいよね!」
しーちゃんが、わたしの肩をポンと叩いた。
食べながらのおしゃべりは、自然とわたしとカナの話になっていった。
「ホント、広瀬くんとハルちゃん、仲が良いよね」
亜矢ちゃんが言った。
しーちゃんが続ける。
「そうそう。叶太くん、風邪引いてて、陽菜に移したくない時とか、わたしんとこに、陽菜を連れてくるんだよね~」
「うそー! ハルちゃん、愛されてるね~!!」
梨乃ちゃんが、驚いたようにわたしを見て、それからカナの方に目を向けた。