12年目の恋物語
羽鳥先輩はオレの方を見て、不思議そうな顔をする。



オレが何も言いそうにないのを感じてか、先輩の方から言葉を続けた。



「ハルちゃんのことかな?」



ハルちゃん!!



ハルちゃんって呼んでるのか!!



それは、ハルと仲が良いヤツらがハルを呼ぶ愛称。



羽鳥先輩は、それほどまでにハルと仲が良いのか!?



いや、考えてみれば、お見舞いにって本を貸してよこすくらいには、仲が良いはずだ。



本好きなら、ただの知り合いでも、見舞いに本を届けるのは普通か!?

これは、普通なのか?



……本好きの気持ち、分かんね~!!!



ダメだろ、オレ。



オレが固まっているのを見て、羽鳥先輩はクスリと笑った。



……ぐぐっ。



笑うなと言いたいけど、とても言えない。



恥ずかしすぎる、オレ。



なぜ、ここまで動揺する!?



「キミとハルちゃんも、色々あるみたいだね」



色々……って!?

なんで、あんたがそんなこと!?



「え……っと、あの……」



オレが何も言えないでいると、羽鳥先輩は顎に手を当てて、こんなことを言った。



「うーん。これは、ボクにもつけいる隙があるってことかな?」



笑顔で言われたその言葉に、オレの頭はとうとうフリーズした。



完全に目が点。



続いて、動揺で目が泳ぐ。



お、お、おいおいおいおいおいおい!!

つ、つ、つけいる隙~~~~っ!!?



羽鳥先輩は、また口の端に笑みを浮かべると、



「じゃ、またね」



と、オレの肩をポンと叩き、風のように、オレの横を通り過ぎた。
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