12年目の恋物語
「ねえ、聞いてる!?」
田尻さんの声が、わたしを現実世界に引き戻した。
「叶太くんが、なんで、あなたに優しいと思ってるの!」
……なんで、カナが優しいか?
なんで?
理由なんて、あるの?
だって、カナは、昔から、ずっと優しかった。
怪訝な顔をしているわたしを見て、田尻さんは舌打ちをした。
「あなたの身体のこと、責任を感じているんじゃない!!」
……責任?
わたしの身体に? カナが?
「……どうして?」
多分、わたしは、困った顔をしていたと思う。
だって、本当に分からなかったから。
……その時は、まだ、知らなかったから。
カナが、そんなことを考えていたなんて。
「信じられない!! 忘れてるの!?」
田尻さんが、吐き捨てるように、そう言った。
「……え?」
力いっぱい悪意をぶつけてくる田尻さん。
「信じられない!!」
再度、そう言って、わたしをにらみつけてから、田尻さんは続けた。