12年目の恋物語

数秒、呆然と立ち尽くした後、慌てて振り返ると、羽鳥先輩は廊下の角を曲がるところだった。



チラリとこちらを見て、

先輩はニコリと爽やかな笑顔を見せ、

オレに軽く手を上げ、

そのまま見えなくなった。



さ、爽やかすぎだろ……。



これで、学年トップの秀才。



細身で、背の高さはオレと同じくらい。

ピンと伸びた背筋、品が良い身のこなし。

見るからに、頭が良さそうで……。



こう言うタイプを好きな女の子も多いだろう。



多分、羽鳥先輩はモテルに違いない。



反対に、オレは、頭はまるっきり凡人。

万年平均点。

だけど、身体はガッチリ鍛えてある。



羽鳥先輩とは、明らかにタイプが違う。



自分で言うのもなんだけど、オレだって素材は悪くないと思う。

平日の朝は走り込み、週末は道場に通って空手をする。



運動部に入ると、ハルとの時間が減るし、文化部には興味がないから、帰宅部。

だけど、大切な女の子を守るには、やっぱり腕力は必要だ。



だから、小学生の頃から、気合いを入れて鍛えてきた。



そうするモンだって思ってた。




けど、

もしかして、それは、大間違いだったのか!?



ハル!!



ハルは、羽鳥先輩みたいな頭が良い人が好きなのか!?





「そりゃ、お前、他に好きな男ができたんだろ?」





呪いのように、兄貴の言葉が頭の中でこだまする。




違う!!

違う!!

違う!!




繰り返し、兄貴の言葉を否定しながらも、オレは何をよりどころにして良いのか、分からなくなってきた。
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