12年目の恋物語

「飛躍しすぎだ! バカ広瀬っ!」



だけど、この慌て方、もしかして……。



オレを半ば羽交い締めにした腕をほどきながら、オレは斎藤の目を見る。



「別に、オレ、偏見ないよ?」



その瞬間、斎藤は口をポカンと開けて固まった。



ん?

なんか、違ってた?



「……おーい。拓斗くーん」



手をひらひらっと斎藤の前にかざす。

徐々に斎藤の顔に表情が戻り、赤くなり、それから、盛大に吠えた。



「おまえ、いい加減にしろよ!! 誰が、男が好きだって!?」

「……あ、違ってた?」

「違うに決まっとろーが!!」

「いや、そんなの分かんないし」

「せめて、オレの言うこと、聞けよ」



斎藤がオレの肩をがしっと両手で掴んだ。



「いや、だから、聞いたじゃん」

「……なにを?」

「女の子に興味ないって」

「女の子に興味なかったら、男が好きってか? おかしいだろ、それ!」

「……ああ、まあ、そうかも?」

「そうかもじゃ、ないって!!」



はあああぁぁぁ、と

斎藤は、盛大なため息を吐いた。



「あーもう。ハルちゃん一筋の広瀬には、分かんないかもな」

「え? なにが?」

「世の中には、女の子に夢中で、女の子しか目に入ってないヤツばっかじゃないってこと」



ゴンと頭を殴られる。



いて。



ってか、オレは女の子に夢中な訳じゃない。



「オレは、ハルが好きなだけで、他の女なんて、目に入ってないぞ!」



斎藤は更に冷たい視線をオレによこした。
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