12年目の恋物語
そして、なんと、オレの隣の席は、「愛されまくり」の牧村陽菜こと「ハルちゃん」だった。
「12年間同じクラス♪ 運命だね」
中学からの友人らしい女子にからかわれて、牧村は、
「すごい偶然だよね?」
と穏やかな笑顔で返していた。
大きな目。
柔らかそうな長い髪。
色白で、ほっそりした身体つき。
確かに、守られるのが似合っている、線の細い感じの美少女だった。
「でかいなー。身長、何センチ?」
ウワサの王子様、広瀬から気さくに声をかけられ、「181」と答えると、すごく羨ましがられた。
そう言う広瀬は、現在、178で、まだ伸びているらしい。
身長もだが、オレのがっしりした身体つきも羨ましいらしく、やたら褒められた。
褒められて悪い気はしない。
現金にも、オレは、いいヤツじゃん、とか思ったりした。
中学の頃の部活を聞かれてバスケと答えると、広瀬は自分はやってないけどNBAは好きで、中継は全部見ていると言うので、また盛り上がった。
どんな軟弱男かと思ったら、小学生の頃から空手をやっていると言うし、噂で持ったイメージとは全然違うと、印象を一変させた。
しかし、最後に出た言葉は、
「ハルをよろしくね」
で、結局はオレは苦笑する羽目になった。
数日後、広瀬が保険委員に立候補すると、クラスが沸いた。
入学から、たった数日。
なのに、もう、広瀬と牧村は誰もが知るところの公認カップルとなっていた。
そして、入学間もないというのに、その日、牧村は欠席。
「ハルちゃん、身体弱くて、しょっちゅうお休みなの」
と斜め前の席の女子が教えてくれた。
「病弱なお姫様を守る騎士(ナイト)が叶太くん。萌えるでしょ~」
その子はウットリと言ったが、オレには、その気持ちはさっぱり分からなかった。