12年目の恋物語
それからだ。
牧村が明らかに広瀬を避け、二人の間がギクシャクし始めたのは。
そして、ここ一週間ほど、広瀬が、オレに「どうすればいいと思う?」と聞いてくる。
オレに聞くな、と言っても、広瀬は一時間も経てば、忘れて、また聞いてくる。
広瀬が焦っているのは分かる。
広瀬が牧村を大好きなのも、大切に思っているのも分かる。
だけど、どうすればいいかなんて、オレに分かるはずがない。
「もっと、恋愛経験豊富なヤツに聞けよ」
広瀬は顔が広い。
幼稚部から、杜蔵学園だってだけじゃなく、たぶん、人付き合いがうまいんだ。
「いくらでも、友だち、いるだろ?」
「だって、こんな話したらぜってー笑われるし、下手したら、次の日には学校中のネタになってるだろうし」
……なるほど。
「まあ、学校公認カップル破局って言えば、確かにネタとしては面白いな」
広瀬は傷ついたような、情けない顔をした。
「斎藤まで、それ言う?」