12年目の恋物語
8.陽菜と羽鳥
6月。
梅雨。
毎日の雨が鬱陶しい。
こんな雨続きの日、わたしの体調は崩れやすくなる。
昔は無理をして調子の良い振りをして登校して、学校で体調を崩して早退する羽目になっていた。
そんな時は、カナがせっせと世話を焼いてくれて……。
けど、やっぱり申し訳なくて、中等部に上がった頃から、無理せず最初から休んでしまうようになった。
この1ヶ月ほど、気が張っていたのか、危ういながらも、毎日、登校できていた。
だけど、今日は、何となく胃が重い。
昔、切った胸の傷跡もシクシクする。
何となく息苦しくて、身体が重い。
そんな身体の中から警告を、わたしは久しぶりに感じていた。
でも、まだ大丈夫。
カナは最近、物問いたげにわたしを見つめてくる。
送り迎えはまだ続いている。
以前は色んな話をしながら歩いていた。
わたしがろくに話さなくなった後も、カナは一生懸命、わたしに話しかけてくれた。
だけど、今は、カナもわたしも無言で歩く。
日課のように、
「送り迎えは、もういいよ」
と言う。
カナもまるで決まり事のように、
「いや、オレがしたいから」
と答える。
そうして、さぞかし居心地が悪いと思うのに、それでもカナはやってくるのだ。
これが責任感からじゃないなら、何だというのだろう?
うつむいて歩きながら、たまに、涙がこぼれそうになる。
唇をきゅっと引き結んで、手をぎゅっと握りしめて、なんとかこらえる。
そんな毎日に、わたしは、もう疲れ切っていた。