12年目の恋物語
羽鳥先輩は、膝に手を当てて、よいしょ、と立ち上がり、空を見た。
「行こうか?」
小さく、うなずく。
「分かれ道まで、ね」
先輩はほほえみ、わたしの鞄を手に取った。
カナとしか歩けない。
だけど、裏口への道じゃなければ……。
「あの……ありがとうございます」
「どういたしまして」
先輩は、嬉しそうに目を細めると、行こうか、と、ゆっくり歩き出した。
カナより細い先輩。
顔つきもぜんぜん違うし、タイプもまるで違う。
だけど。
背の高さが、ほとんどカナと同じだった。
ゆっくりと、わたしに合わせて歩いてくれるのも。
先輩は何も言わない。
だけど、さり気なく、わたしの歩く速さを気にかけてくれている気配を感じた。
穏やかで、優しい気遣いが、心地よかった。