12年目の恋物語
「で、こんなところで待ち伏せして、何の用?」
そう。
このタイミングでの声かけ。
用事なしで、朝のあいさつとも思えない。
だいたい、おはようの一言もないし。
「……あの、さあ」
言いにくそうな、叶太くん。
聞いてはみたけど、要件は明らか。
だから、助け船を出すことにした。
「って、聞くまでもなく、決まってるか」
陽菜が、わたしのところで、お弁当を食べるようになって、もう1ヶ月近い。
叶太くんが、それを良しとしていないのは、見ていて、よく分かる。
だいたい、この時間。
8時20分。
普通なら、陽菜を迎えに行って、席で陽菜とおしゃべりしてる時間。
わたしは、朝練があるから普段は見かけないけど、休み時間の様子を見ていれば、想像がつく。
「陽菜のことでしょ?」
「あ、うん」
陽菜とは、初等部からのつきあい。
いつもニコニコ笑ってる、優しい子。
ふわふわの長い髪はちょっと茶色っぽくて。
とにかく、抜けるように色が白くて。
折れそうなくらいに華奢で。
目が大きくて、とても可愛い顔をしている。
まさに、守ってあげたいお姫さまナンバー1みたいな女の子。
陽菜の王子さまに立候補したい男子は、たぶん、山ほどいる。
だけど、既に、叶太くんがいるから、誰も名乗りを上げられないでいる。
その叶太くんが、真顔で言った。
「最近、ハルが変なんだ」