12年目の恋物語

「歩きながら、話そうか」

「あ、うん」



とにかく、ひたすら歯切れの悪い叶太くん。

だけど、わたしは、サッサと歩き出す。

こんなところで、のんびりしてたら予鈴が鳴ってしまう。



「……オレ、なんか、やらかしたかな?」



叶太くんは、小声でつぶやいた。



「ん?」

「あの、さ。つまり……」

「あ、大丈夫。聞きたいことはわかるよ」



叶太くんが、わたしに意味が通じなかったと思ったのか、言葉を選び直そうとするのを慌てて止めた。



「って言うか、なんで、こうなったか、わかんないの?」



そう言うと、叶太くんは、傷ついたよ、という顔をした。



なんて、わかりやすい人。

思わず笑ってしまう。



「……笑うなよな。オレ、マジに困ってんだからさ」

「ちがう、ちがう。そこで笑ったんじゃないって」



早足で歩いたこともあり、けっきょく、何も聞けない内に、教室に着いてしまった。

さすがに、教室に入ったら、話していい内容じゃない。



叶太くんが教室の前で、ふうっとため息を吐いた。



「うーん。じゃ、続きは放課後にしよっか?」

「え? 志穂、部活は?」



わたしはバスケ部所属。



初等部のクラブ、中等部1年の途中まで、叶太くんも同じくバスケ部だった。

だから、わたしたちは、けっこう、仲が良い。



「始まる前か、終わった後、で、よければ」

「わかった! 待ってる!」
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