12年目の恋物語

田尻さんの言葉がわたしの頭の中を駆け巡った。



カナが、わたしを走らせた?



そんなバカな。

カナはいつも、歩くのが遅いわたしに合わせて、ゆっくり、ゆっくり歩いてくれる。

それに、わたしたちは、隣の家に住んでいて、わたしが走れないのを、カナが知らなかったはずがない。



……ううん。違う。



カナ、いつから隣に住んでる?

幼稚園に入って、わたし、初めて、同じくらいの年の子を見た……って思ったもの。

カナが隣に住むようになったのは、わたしが幼稚園に入った、後?



覚えていない。



ううん。きっと、どこかに記憶が……。



「あのね!? 聞いてる!?」



田尻さんが、わたしの腕を掴んだ。



「……え? ……あ、はい」

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