12年目の恋物語
駅前のファミレス、お食事処 和(なごみ)。

名前の通り、和食メインのファミリーレストラン。

夕飯時だけど、平日なのもあり、すぐに席に案内された。



オレは軽くキツネうどん。

帰ってから、夕飯も食べる予定。

志穂はミックスフライ定食。



「叶太くんは、ほかに、思い当たること、ないの?」



店に入るまでに、大体のところは話し終わった。

ハルがおかしくなったのは、いつ頃からか、とか。

オレが今までずっと、親父に頼んで、ハルと同じクラスにしてもらっていたのが、ハルにバレたこととか。

志穂が、ハルの様子が変だから心配していたというのも聞いた。



「ないから、志穂に聞いてるんじゃん」

「……ま、そうよね」



志穂も首をひねる。



「でもさ、それが理由って、やっぱおかしくない?」

「だよなぁ?」



志穂に聞けば、何か分かるかと思ったのに。

思わず、ため息。



すると志穂が、ピッと人差し指を立てた。



「ため息、ひとつ吐く度に、幸せがひとつ逃げてくよ」

「え!? なに、それ」

「って、うちのお父さんが、いつも言うの」



志穂は、歯を見せて、ニッコリ笑った。



「ため息吐く間に、頭使って、足を動かしなさいって」



ため息吐く間に、頭使って、足動かす。

ため息ひとつ吐くと、幸せがひとつ逃げていく。



「いいこと言うなぁ~!」

「でしょ?」



嬉しそうに志穂が笑う。



「確かに、オレ、最近、ため息よく吐いて、幸せがどんどん逃げてってる感じ」



言いながら、ため息をまた吐きそうになり、慌てて口を押さえた。

志穂が、それを見てクスクス笑った。
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