12年目の恋物語
「まだ、分からないの!?」
田尻さんが声を大きくする。
だって、カナが責任を感じるようなこと、何もないのに……。
一体、何を分かれというのだろう?
「聞いちゃったの。わたし」
田尻さんが言った。
「叶太くん、お父さんに、あなたと同じクラスになれるようにしてくれって、頼んでいるんだって」
……え?
「あなたのことが心配だから、あなたの側にいられるように、あなたの世話をできるように、同じクラスにしてもらっているんだって!」
田尻さんが叫んだ。
「……ウソ」
今年もまた一緒か。
腐れ縁だな。
毎年、クラス発表の掲示を見ながら、カナはいつも、わたしに笑いかけてくれた。
あれは、ウソだったの?
「先生たちが話しているの、聞いちゃったのよ!」
先生たちが?
確かに。
確かに、カナのお父さまは地域の有力者。
だから、ちょっとくらいのムリなら、おじさまから頼めば、聞いてもらえるかも知れない。
でも……
そんなはずはないと思いたかった。
だけど、わたしは、分かっちゃったんだ。
それは、もしかして、……ううん、もしかして、じゃなく、きっと、まぎれもない真実なんだって。