12年目の恋物語
次に目が覚めた時にも、まだ、ママがいた。
わたしのロッキングチェアに座って、雑誌を読んでいる。
いつの間にか、点滴の他、酸素マスクまで付けられていて、そのせいか、身体は随分楽になっていた。
「陽菜」
特に動いた訳じゃないのに、ママはすぐにわたしが起きたことに気がついて、ベッドサイドに来てくれた。
わたしとは、あんまり似ていないキリッとした美人のママ。
背だって、わたしより10センチ以上高いし、髪もストレート。
「具合、どう?」
「……ん。大分、いいみたい」
「そう。よかった!」
ママは少し首を傾げて、どうしようかなって感じでわたしを見てから、わたしのベッドに腰掛けた。
「あのさ」
「ん。なぁに?」
ママはまた、どうしようかなって感じで、わたしを見る。
珍しく歯切れが悪い。
いつも、言いたいことをズバズバ言う人なのに。
「どうしたの、ママ?」
そう聞くと、ママは何かを決めたように、ニコリと笑みをみせた。
「陽菜、なにか、悩んでない?」