12年目の恋物語
ママは続けて聞いた。
「身体の調子、悪かった?」
良くはない。
でも、特別、悪いわけではなかった。
ううん、と首を左右に振る。
「そう」
ママはわたしの腕を取った。
太さを確認するように、手首を握り、腕をなでる。
「沙代さんに言われたの」
沙代さんは、わたしが生まれる前から、家にいるお手伝いさん。
ママより十歳以上年上で、おばあちゃんよりは若くて、とても優しい人。
お料理が上手で、明るくて、くるくる働く沙代さんが、わたしは大好きだ。
「陽菜が、ろくに食べてないって」
それから、ママはわたしの頬を両手で包んだ。
「ごめんね。陽菜が小食なのは昔からだって、高をくくってた」
はあ、とママは小さくため息を吐いた。
「ホント、よそで偉そうな顔して患者診てるくせに、自分の娘の異変に気づかないなんて」
ママは悔しそうに、自分の頭をガシガシかいた。
「ご、ごめんね」
思わず謝ると、頭をなでられた。
「なんで、陽菜が謝るの」
そうして、優しく微笑んでくれた。
「痩せすぎよ。陽菜。……一体、何をそんなに悩んでるの?」