12年目の恋物語
泣いちゃダメ。
そう思えば思うほどに、涙はあふれ出し、止まらない。
泣いたら、何でもゆるしてもらえるなんて、思ってない。
だから、泣きたくなんてないのに。
なのに……。
最近、わたしは泣いてばかりいる気がする。
「陽菜」
目を閉じ、手のひらで顔を覆った。
涙は止められないけど、
これ以上、泣き顔を見せたくなかったから。
ベッドがキシむ音がして、ママが身体を動かした。
奥歯をキツくかみしめて、涙を止めようと、声が出ないようにとしていたら、ふわっと空気が暖かくなった。
気が付くと、ママに抱きしめられていた。
……ママ。
ママ。
その腕のぬくもりから、ママが、わたしを心から心配してくれているのを感じた。
「ごめん…なさい」
ママの暖かさを感じながら、謝った。
「なんで、あやまるの?」
ママが優しい声で言った。
「は、はな…話せない、から」
言いながら、また、涙がわっとあふれ出す。
嗚咽が漏れそうになるのをこらえるので精一杯だった。