教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
先生がいつのまにか寝ているのに拍子抜けしたあたしも、知らぬ間に眠りに落ちていた。


ガタンガタン、ガタンガタン。


ぼーっとしていたらだんだんと電車の音が遠くなってきて、そして意識も遠くなって眠ってしまったのだ。


しばらくして目を覚ますと同時にアナウンスが聞こえてきた。


<まもなく…>


ああ、この駅で降りるんだった。


「先生、起きて下さい。もう着きますよ」


「…うん」


先生は鳥がさえずるように目を開く。


しかしこの人、まつ毛長いなぁ。


ちょっとうらやましいかも。


「お前、なに人の顔見てんだ?」


先生が聞いてくる。


「いや、なんでも…」


「俺に見とれてないでさっさと降りるぞ」


さすがにバレたか。


降りたことのない駅のプラットホームに立つ。


今、ここにあたし達の関係を知っている人は誰もいない。


そんな太陽のようにまぶしい現実が急にあたしの頭をかすめた。


学校を抜け出して出かけた時よりも心が躍る。


堂々と手を繋げるし、愛を語ることだって出来るんだ。


すると急に開放的な気分になる。


「行きましょう、先生」


来たこともない場所なのにあたしは自然とそう言っており、足も進み始める。


そして目は、輝いていた。
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