教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
言われるがままにバスを降りたけど…。


どこですか?ここ。


なんせ勝手のわからない、知らない町。


歩こうにもどこに何があるのかまったくわからない。


「あの、先生」


「ふっふっふ…」


「先生?」


「はっはっはっはっはっ!」


何なにナニNANI!?


先生、お若いのに頭でもやられたのかな?


「ねぇ、先生っ」


「なんだ?今日の天気なら晴れだぞ」


満面の笑みで答える先生。


そんなこと聞いてないっつーの!


白けたような視線を向けると、先生は正気に戻ったかのように言い出した。


「嬉しいんだよ」


「何がですか?」


「今日はずっとお前と一緒にいられるから」


いや、あの、それは嬉しいんですけどね。


さっきあたしが言ったのに今までずっと気づかなかったわけ?


っていうかさっきの笑い、何か企んでいるように聞こえてならないんだけど。


そんな思いを込めて先生を見ると、先生は背を向けて歩き出した。


…まぁ、いいか。


あたしも1日中一緒にいられるなんて夢のようなんだから。


だから笑顔で追いかける。


「先生、待って下さいよ」


「早く来い」


口元に微笑みを見せて先生は振り向く。


あたしは彼の大人の男性らしい手を握る。


歩いていると観覧車が前方に見えてきた。


あたしは反射的に走り出した。
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