教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
先生と目が合う。


ドキッ。


あたしの心臓が大きく脈打った。


足が上手く動かない。


歩き方がロボットみたいになってしまう。


よそ行き用の服を着たロボット…。


なんだか滑稽だ。


って、今はそういう話じゃないか。


一方の先生は余裕でもあるのか平然とした顔をしている。


「顔、真っ赤だぞ」


当たり前です。


まぁ、あたしだってそれを期待していたのかもしれない。


だからここまでついてきた。


あぁ、足がガチガチだ。


リラックスしなきゃ、リラックス。


「先生」


「ん?」


「先生がバスローブ着るとAV男優みたいですね」


「バカ」


呆れ顔で先生はため息をつく。


「そういうこと言うとAV男優顔負けの…」


「あー、わかりました。すみません(棒読み)」


正直、先生が何を言おうとしたかわからなかったが、彼が黒いオーラを発していて嫌な予感がしたので言葉を遮っておいた。


沈黙が訪れ、思わず見つめ合う形になってしまう。


「先生、あたし」


「何も言うな。何も考えるな。お前は俺だけ見ていろ」


強引な言葉で意地悪される。


「先生…」


「青葉、嫌だったら言ってくれ」


反射的に横に首を振ると先生は優しくあたしを抱きしめた。


また、あたしは溺れていく。


森田湊典という人間のすべてに。







-翌朝-


カーテンから射し込む光で目を覚ます。


「おはようございます。先せ…!」


横を見たあたしは思わず目を見開いた。


先生が…いない!?
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