教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
ふと先生を見ると、先生は路上ライブの彼らを見て険しい顔をしていた。


険しいというよりは深刻と言った方がいいかな。


いや、違う。


まるで先生は…。


狼狽しているみたいだった。


路上ライブの人達と知り合いなのかな。


そんなことを考えている間にラップは更に続いていた。


「俺がどんなに願っても


お前はもうここにはいない


なぜだAh俺は何をしていても


どこにいようとも


お前しか頭にいない


なのにどうしていないんだ


見捨てた奴が悪い


見捨てた奴が悪い


そうさ見捨てた奴が悪い


そいつはどこだ、闇の中


そんなの納得いかねぇ


そう言ったってそれが人生さ


でもこの気持ちはそれでは通用しない…」


少し聞かない間にラップの歌詞は一転して、なんだか謎めいたというか意味深なものになっていた。


先生はグイッとあたしの腕を引っ張り、彼らから逃げるように歩き始める。


腕が痛い。


いつか翔君と話していた時に先生に腕を引っ張られたことはあったけど、あの時は引っ張られた腕の付け根が痛かった。


今は先生が手に力を入れ過ぎてそこが痛い。


「先生、痛い」


「あっ、ごめんな。つい…」


慌ててあたしの腕を離す先生。


その顔には冷や汗すら滲んでいた。
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