教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
第十七楽章 突然
先生は自分を責めるような言い方をする。


「結局は自分が一番かわいくて。俺も…」


「あの」


「自分を守るために正義を貫くことが出来ずに、ここまで生きてきてしまった」


先生には、後ろ暗い過去か何かがあるの?


そしてその時から苦しんでいたの?


今日という日までずっと?


そう思うと胸が苦しくなった。


「そして俺は反省するどころか忘れていた」


「やめて下さい!」


耐えられなくてあたしは先生を抱きしめる。


「青葉」


先生の目は相変わらず美しかったけど悲しい輝きをたたえていた。


「先生、悩んでいるなら話して下さい。あたしじゃ役に立たないかもしれないけど。でもあたし…」


「青葉」


先生はあたしの言葉を遮る。


「ありがとう。だが、言えないんだ」


「どうして?」


「大人の事情」


「何ですか、それ」


「言ったら大人の事情じゃなくなる」


「だけどあたしは」


「青葉、俺は過去を思い出してしまった。薄暗い過去を。お前と愛し合う資格もない。俺は反省の日々を送るしかない」


先生の言うこと、むちゃくちゃだよ。


先生はいつも突然なんだから。


「そんないきなり」


「ごめん。だが、思い出してしまった以上…」


そして先生は後ろを向く。


意味がわからないよ。


あたしの気持ちも知らないで。
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