教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
家に帰ってからはずっと自分の部屋に閉じこもっていた。


あたしは先生の何だったんだろう。


ふいに先生の言葉が蘇る。


「答える義務はない」


「悪いけど俺、忙しいから」


「ふざけるな!」


「だったらどうしてそんな悲しい顔してんだよ!」


「青葉、俺は過去を思い出してしまった。薄暗い過去を。お前と愛し合う資格もない。俺は反省の日々を送るしかない」


思えばあたし達、すれ違ってばかりだったよね。


もっと早く気づけばよかった。


先生に出会った日、無理な恋愛だってわかっていれば、こんな思いなんてしなかった。


平和な日曜日を過ごしていたはずだっったのに。


だけど仕方ないじゃない。


止められないんだもん。


この気持ちにブレーキなんかかけようものならあたしは壊れてしまう。


行き場を失った思いが暴発して。


ああ、とりあえず落ち着かなきゃ。


あたしはMDプレイヤーに手を伸ばす。


しかし、ジャズを聞こうがクラシックを聞こうが、ヒーリングを聞こうがロックを聞こうがざわざわした気持ちはおさまらない。


アニメソングもトランスもヒップホップもダメである。


そう。


それくらい先生への想いは強いのに。


壊れてしまう。


別れられるわけがない。


この前、どうして別れようなんて言えたんだろう。


いくら苦渋の決断だったとはいえ、あたしは自分に嫌悪感を抱かずにはいられなかった。
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