教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
-翌朝-


ケータイのけたたましいアラーム音で目が覚めた。


あれから食事も喉を通らなかった。


ただ現実逃避のために寝ていただけ。


目が覚めれば何か変わるような気がしたんだ。


だけど何も変わることはない。


今日は月曜日。


いつもの慌ただしい朝が始まる。


着替えて、髪型を整えて、朝食を食べて、駅まで自転車を走らせて、バスに乗る。


お腹は空いていたけど、朝食はコップ1杯の牛乳だけで済ませてしまった。


ゆっくりと走り出すバスの窓越しに、電車に遅れまいと駅に駆け込む人々が見える。


太陽の光を、厚めでグレーの雲が遮っていて空は少し暗かった。


今日、先生と顔を合わせるのか…。


気持ちは複雑だった。


自分を追い込んだ先生をなんとかしたいとは思うけど、嫌な顔をされるような気がする。


その時、あたしはどうすればいいのだろうか。


「好き」


その気持ちをぶつけたい。


ちゃんと向き合わせたい。


だけど嫌な顔をされてまで言うことなのかな。


迷惑かけてまで言っていいのかな。


あたしの中にたちまち葛藤が生まれる。


そしてその葛藤はやがて小さな爆発を起こし、消えた。


言ってみなきゃわからないものね。


実際に先生に言わないと始まらない。


そう思い込んでみる。


気づくと、窓の向こうにはいつものバス停。


決意してあたしはバスを降りた。
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