教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
しかし、その決意はすぐに崩れるのだった。


なぜなら朝のホームルームの石野先生のセリフが


「今日は体調不良で森田先生はお休みです。もしかしたら来れるかもしれませんが」


というものだったのだから。


「えーっ、そんな」


「楽しみにしていたのにな~」


「あーん、湊典様ぁ」


女の子達が口々に騒ぎ出す。


石野先生は苦笑していた。


嘘でしょ?


先生、どうして?


でも「もしかしたら来れるかもしれない」ってことは期待してもいいのかな。


しかし、そんなわずかな期待もむなしく4時間目の授業も終わってしまった。


今日は授業変更で世界史が英語になっている。


その英語は6時間目。


あたしはどうしようもない焦りを感じた。


別にあたしが焦ってもナンセンスなのだけど。


でもいくら決意が崩れたって決めたんだから。


ちゃんと話をするって。


そうじゃないと納得出来ない。


だからあたしは行った。


「失礼します」


教育実習生の控え室に。


控え室には翔君だけがいた。


「どうしたんだい?」


彼は不思議そうに尋ねる。


「森田先生は?」


「体調不良らしいよ。これから来るかもしれないけど」


「その話、本当だよねっ?!」


「そ、そうだけど…」


翔君はあたしの勢いに押されているらしい。


「だったら!」


あたしは勢いよく近くにあった椅子に座った。


「あたし、ここで待つ!」
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