教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
やっぱり翔君だ。


「最近、あたし達会ってなかったよね。もう3年経っちゃったよ」


「まあ、色々あったからね。大学生はなにかと忙しいんだよ」


「ふーん。変わらないね。翔君」


「そうかな」


「授業もまじめな感じだったし。でも翔君らしくていいと思う。少なくともあたしは好きだよ」


「ほめてくれるなんて嬉しいな」


あたしは返事の代わりに微笑んだ。


窓の近くで話しているので風が吹き込んで、2人の髪をさらさらと揺らす。


ふいに翔君が穏やかな声で言った。


「かわいくなったね、水香ちゃん」


「えっ…」


な、何!?


いきなり何を言い出すんだ、この人は。


「じ、冗談だよね?」


「いや、本心」


「やだ、翔君ったら口が上手いんだからあ。はっはっはっはっ」


あたしは笑いながら翔君をバシッと叩いた。


彼はかなり痛そうな顔をしている。


もちろん謝った。


「嘘でしょ?」


「本気だよ」


翔君の澄んだ目が、声があたしに突き刺さる。


「翔君?」


おかしいよ。


翔君はこんな人じゃない。


「そんな顔するなよ…」


「じゃあ、どんな顔をすればいいの?」


翔君は妖しい笑みを浮かべて言った。


「こんな顔かな」


そして彼はいきなりあたしにキスをした。
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