教壇と愛の狭間で～誰も知らない物語～

「あ､青葉?」


先生はあたしの突然のキスに驚いたようだ｡


「あたしじゃ先生の光にはなれないですか?」


「え?」


「あたしはあれじゃ納得出来ないんです」


「だからそれは大人の事情で」


先生の言葉を遮ってあたしは大声で言った｡


「子供扱いしないで下さい!」


「…」


「先生から見れば子供かもしれない｡だけど､だからって理由も言わないで去っていくなんてあんまりです!」


「青葉」


「あたしは先生の何なんですか?都合が悪くなれば黙って別れようとするような､そんな存在なんですか?」


「違…」


「あたしじゃダメなんですか?先生の悩みを解決出来ないですか?子供だから」


どうしてあたしは泣いているんだろう｡


それはきっと､昨日からずっと抑え込んでいた気持ちが溢れ出したせい｡


言葉と共に涙まで流れてしまったんだ｡


「青葉」


「はい」


「俺はお前を愛することを許されるだろうか｡たとえ罪を犯した人間を見逃したとしても…」


罪を犯した人間を見逃した?


でも､それでもいい｡


きっと理由があるから｡


あたしはゆっくり頷く｡


そしてあたし達は抱き合ってただ涙を流していた｡


しかし､先生との幸せが引き裂かれる時が一刻一刻と近づいていたなんて｡


あたしがそれを知る由なんてあるはずもなかった｡