教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
2時間目は英語。


先生はまた冴えない表情でやって来た。


黒板にアルファベットの羅列を書いていても、英語をなめらかに発してもどこか上の空。


悲しげな表情を浮かべる先生にまわりも噂をする。


「今日の湊典様、元気がないわ」


「どうしたんだろう」


「またなぐさめてさしあげようかしら」


「湊典様を悲しませる人はこの私が許さないわ」


前もこんなことはあったけど、今回はあたしでさえ理由がわからない。


さっきの女の子じゃないけど、もし先生を悲しませるような人がいたらあたしだって許さない。


あんな先生を見ているといたたまれなくなってくる。


「I'm sorry my beloved.I cannot love you more.Please forgive me…」


ふいに先生が独り言を言った。


しかし、英語が苦手なあたしには聞き取れなかった。


とりあえず教科書の英文を読んだと思い込んで、聞かなかったことにする。


何もないような顔をしてあたしが教科書をパラパラとめくる様子を見て、先生は更に悲しげな表情になる。


あれ?


もしかして今日の先生の元気のなさは、あたしに関係があることなの?


先生にあんな顔をさせているのはあたし?


気になったあたしは昼休みに教育実習生の控え室を訪ねた。
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