教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
一瞬、思考回路が停止した。


「先生、どういうことですか!?」


「それは」


「ねぇ!先生!」


あたしは思わず先生の肩をつかむ。


「どうしてですか!」


そう言っていくら彼を揺らしても、先生は虚ろな目で首を横に振るだけ。


「どうして…」


あたしの声も力がなくなっていく。


いや、声だけじゃない。


体全体から力が抜けて、あたしはドサッと先生の足元に座り込んでしまった。


嫌な沈黙が走る。


何の前兆もなく、先生は顔を隠した。


大人の男性らしい広い肩が震えている。


泣いているんだ。


そう直感した。


だけどあたしだって悲しい。


泣きたい。


「先生。あたしだって悲しいです。でも、理由を言ってくれないとわからないじゃないですか。泣いているだけじゃ困ります」


あたしの言葉に、先生はサッと素早く涙を拭う。


顔を上げた彼はいつもの美しい顔だったが、水晶の輝きを持つ瞳は少し赤くなっていた。


「青葉」


あたしの名前を呟く。


そしてまたしばらくの沈黙の後、先生はしぼり出すように言った。


「ハメられたんだ」


「ハメられた?」


あたし達が付き合えなくなってしまうのは、誰かの計らいだっていうの?


「先生、それって一体誰なん…」


「すべては妻の陰謀だ」
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