教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
「…」


キスが終わっても、しばらく何も言えなかった。


ただ顔を赤らめて、口を手でふさぐだけだった。


「うん、そういう顔だ」


初めてだったのにそんなに嫌悪感は感じなかった。


でも…。


「あたしの…あたしの知ってる翔君はこんな人じゃない!」


本当におかしい。


あたしの知ってる翔君はクールだけど優しくてお兄さん的存在。


こんなことする人じゃない。


そうだ。


きっとこの人は偽者だ。


翔君に似た男の人なんだ。


でも、そう思うにも無理があって。


気づけばあたしは廊下を疾走していた。


ただ本能的に森田先生を求めている。


3年間会わない間に翔君がおかしくなってしまった。


あたしの恥じらう顔が見たいなんて言った上に、キスまでするなんて。


一体どうしちゃったの?


小さい頃は翔君とその妹の氷月(ひづき)ちゃんとあたしの3人でよく遊んだものだ。


あたしが無茶をするといつも翔君が助けてくれた。


そして、あたしが中学生になってからは勉強をわかりやすく教えてくれた。


だから翔君に教わってた間はテストでもいい点が取れて、成績上位者のランキングにもあたしの名前はよく載ったものだ。


暇な時は遊びの相手をしてくれた。


それなのにどうして…。


ドンッ。
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