教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
「奥さんの?」


「ああ」


先生の奥さんの陰謀?


何それ?


「あいつは俺を陥れるために俺と結婚したんだ」


「そんな、ひどい!」


「俺の家は、実はSHIBASAKIグループに属する、ある会社なんだが」


「SHIBASAKIグループってそれ、かなり有名じゃないですか」


「ああ。それで親父の跡継ぎは俺の兄貴がなるはずだった。だが、あいつは折田財閥の名前と金の力を使って俺を跡継ぎにさせてしまった」


「折田財閥って、それも有名ですよね?」


「あいつの家はその有名な折田財閥だ。跡継ぎにさせられたせいで俺は夢だった教師にもなれず、あいつと離婚することも出来なくなる」


「そんな…」


どうして?


どうして運命はいつもあたし達の恋を引き裂くの?


恋慕という感情は人間の特権じゃなかったの?


それとも先生が既婚者だから?


だけど愛する気持ちは、他の人達と何ら変わらないのに。


先生は先ほどよりいくらか穏やかなで言う。


「前からずっと夢見ていたんだ。俺とお前の関係が教師と生徒じゃなくなったら…」


「なくなったら?」


おうむ返しに聞くあたしに、先生はまっすぐな視線を突き刺した。


「その時は、あいつと別れてお前と共に生きていくつもりだった」
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