教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
沙奈さんはふっと笑って言う。


「跡継ぎ、つまり会社の責任を追う者からしてみれば、そこらへんの平凡な女の子と付き合うより、よっぽどいいと思わない?」


「俺は水香を愛している」


先生の、あたしを抱く手に力が入った。


「フフフ、残念ね。それでもあなたは跡継ぎであることは変わらない。しかも私と結婚している」


「だから?」


先生はいらだちを顔に表した。


「その跡継ぎたる者が、不倫なんてしているだなんて世間にバレたら…どうなるんでしょうね?」


彼女は妖しい笑み…いや、不敵な笑みを浮かべる。


「お前、脅す気か!?」


先生の顔が青ざめる。


沙奈さんはそれには答えずに言った。


「私とあなたは幼なじみよね。「教師になるんだ」って夢を追いかけているあなたはキラキラしていたわ」


「そうかよ」


「ええ。なのに私は継ぐ気のない折田財閥を、会長の娘だからという大人の勝手な事情で継がされる」


「…」


「あなたはお兄さんがいるから、会社の方は彼に継がせて、自分は夢を追いかけることが出来るわ」


「…」


「だけど1人っ子の私はそれも出来ない。大人達の敷いたレールの上を走らなきゃいけないの。理不尽よ。私の人生なのに。私だって私なりの夢があったのに」


もしかして、すべては嫉妬心から?
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