教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
「だから折田財閥の名前を使ってあなたを陥れたのよ」


それを聞いた先生は小さく震える。


「自分が味わわなくてはならない苦境。それに俺を巻き込んだわけか。同じ目にあわせることで、俺にもお前の苦しさを味わわせたのか」


「そうよ」


「そうか。要するに、自分は苦しんでいるのに、俺は自由に夢を追いかけているのが気にいらなかったんだな?」


「ええ」


「自分のわがままな欲望のために他人の夢を破壊したわけか」


「そういうこと。フフフ、ちゃんとわかっているじゃない」


「ふざけるなよ!」


先生の目には怒り、悲しみ、色々な感情の色が溢れていた。


しかし、沙奈さんはそんな先生にも臆する様子がない。


「ふっ、だけどあなたにも負い目はあるんじゃないかしら?」


「負い目だと?」


「不倫よ」


「あ?」


「あなたは妻の私を差し置いてその子と不倫。私はあなたの夢を壊す。お互いに負い目があるわ。だから引き分けにならなくて?」


「…」


沙奈さんの吹っ飛んだ理屈に先生は混乱しているようだ。


そんな先生を尻目に、沙奈さんは悪魔の微笑みを浮かべて言う。


「まぁ、いいわ。こうして今、私の野望はかなった。あとはあなたの教育実習期間が終わるのを待つだけだわ」
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