教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
沙奈さんは満足したように微笑む。


「ふざけるな!」


闇をも切り裂くように先生が叫んだが、沙奈さんはこう言い捨てて歩き出してしまった。


「教育実習期間が終わるまで、せいぜい別れを惜しんでいるといいわ」


沙奈さんがいなくなり、先生と2人きり。


ああ。


本当に先生と結ばれることはないんだね。


それを実感した。


そして真相。


すべては沙奈さんの嫉妬心だったんだ。


先生があたしの名前を呼ぶ。


「水香」


「はい」


「これが理由だ。お前と付き合えない理由」


「先生」


「…んで」


「え?」


「なんでもっと早く出逢えなかったんだよ!」


あたしはいきなり涙を流す先生を見て戸惑うだけ。


「もっと早く出逢えていれば…」


そう言う先生が切なくて愛しくてあたしまで泣いた。


そうだよね。


あたし達、もっと早く出逢うべきだったんだよ。


もっと早く出逢えていたならきっと、誰の目も気にしないでデートしたり、キスをするたびに罪悪感を感じることもなくて。


数えきれない日々を先生と過ごすことだって出来た。


それなのに今、目の前にあるのは別れだけだ。


あたし達はしばらく涙を流した。


涙が乾くまでその場に佇んでいた。
< 138 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop