教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
「あっ、そうだ。水香は今日、誕生日だよね?」


そう。


今日、6月5日はあたしの誕生日。


今年で17回目だ。


「はい、プレゼントよ。おめでとー」


陸が筆箱の大きさくらいの包みをくれた。


「ありがとう。さっそく見てみてもいい?」


「いいよ」


モノトーンのシックなデザインの包みを開けてみると、中から出てきたのはブルガリの香水。


先生の使っているブルーではないけど。


さすが社長令嬢。


友達へのプレゼントにもお金がかかっている。


先生とおそろいに近い香水を前に、思わずニヤニヤ笑いがこぼれた。


「水香?」


「あっ、なんでもない。なんでもないのよ。おほほほほ~」


「そ、そう?さて、先生にアピールでもするためにつけておくかな」


そう言って陸は香水を自分に向けてシュッと一吹きした。


これはエルメスのナイルの庭かな。


グリーンマンゴーの香りが辺りに漂う。


あたしも陸からもらったブルガリをさっそく使ってみる。


ダージリンティーの優しい香りがあたしをやわらかく包み、なんだか魔法をかけられたシンデレラのような気分になってくる。


「陸、あたしちょっと出るね」


「行ってらっしゃーい」


あたしは立ち上がった。


まだ時間はあるし、先生の元に行こう。


陸のおかげで気持ちが少し軽くなったところで、あたしは教育実習生の控え室に行くのだった。
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