教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
-6時間目-


今日は授業変更で3時間目にあるはずだった英語が6時間目に移動していた。


だから今は英語の授業中。


「Ice that burns,it is methane hydrate…」


相変わらず先生の発音はきれい。


石野先生、ごめんなさい。


でも今だけは望ませて下さい。


「もし英語の担当が森田先生だったら、ずっと先生を見ていられるのに」と。


「もし」だなんて言葉を使って、叶うはずのない希望を抱くのは時間の無駄だと誰かが言っていた。


でも本当にそうかな?


確かに叶う確率がないなら無駄かもしれないけど、それでもいいんじゃない?


なぜならなんだかわずかでも望むと光が見える気がする。


あたしだけかもしれないけど、希望が心の支えになっているように思うのだ。


だからきっと悪いことじゃない。


無駄なんかじゃないよ。


思わずそんなガラにもないことを考えてしまった。


教壇の上では相変わらず先生が教科書の本文の訳の説明をしている。


「いつも言っているが、SVラインは必須。つまり主語と動詞に下線を引いておくのがまず基本だぞ。次に…」


こんな時、時間が経つのは早い。


キーンコーンカーンコーン。


あぁ、終わってしまった。


まぁ、いいか。


来週もあるし。


そんなあたしの耳に先生の声が届いた。


「えー、今日が最後の授業だったわけですが」


えっ?
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