教壇と愛の狭間で~誰も知らない物語~
入ってみると、逆光で社長の顔が見えない。


体格からして男の人のようだが。


「さて、君は例の新入社員だな?」


「は、はい。青葉水香と申します。よろしくお願い致します」


あたしは深々と頭を下げる。


すると社長は履歴書みたいなものを見て読み始めた。


「青葉水香、18歳。桜華風女子高卒業だな?」


「はあ」


どうして確認する必要があるんだろう。


学歴にこだわる性格とか?


なんかそういう人、嫌だなぁ。


あたしの思いをよそに、社長は立ち上がった。


「まぁ、今日からよろしく頼むよ。水香」


えぇー!?


下の名前で呼んじゃいますか。


「何を驚いているんだね?」


「い、いえ」


「まだ気付かないのかね?」


「はい?」


「私、いや、俺の名前が森田湊典だってことを!」


「ああーっ!」


声とか聞いていて、ずっと違和感はしていたんだけど、まさか先生が社長!?


社長がカーテンを閉めると、視界に侵入してくる光の量が減って相手の顔が見やすくなった。


それは確かに先生の顔だ。


え?


ちょっと待ってよ。


あたしがここに入ることになったのは、元はといえば翔君が強引に入れさせたからであって。


と、いうことは…。


あたしは驚きのあまり、空気が割れそうなくらい大声で叫んだ。


「まさか、すべては翔君の陰謀っ!?」
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